白熱する移民問題 保守派の真意は「法の基本遂行」
テーマが「移民」「親子の引き離し」となると、居住形態が合法・不法という法治国家としてのそもそも論はさておき、「せっかくアメリカが好きなのだから受け入れてやれば」というような感情論に走ってしまいがちになる。
今回、マット・シュラップ議長はこうした白熱する感情論に対し、ピシャリと一石を投じた。議長は、不法滞在に当たりうる何千もの移民が毎日のように国境を超えアメリカ定住を企む現状を指摘し、夢物語ではなく現実を直視すべきと指摘。また、アメリカは法治国家であるとの基本姿勢を毅然とした態度で示した。だからこそ、移民家族のうち親が不法滞在者にあたるケースでは、法治国家として違法行為を容認しない当然の措置を講じつつも親子が一緒に過ごせる環境がベストである旨を強調している。
議長の姿勢に「厳しすぎる」との声を挙げる共演者。しかし、トランプ大統領が当初掲げた「300万人」退去説は、単純に前オバマ政権が執行した実数値「250万人以上」に近いところに焦点を定めただけではないか、というのが、冷静にアメリカ政治を見てきた有識者達の見方といえる。どういうことか?
移民を抱える国は世界中に数あれど、アメリカほど地方分権が尊重される移民大国は類を見ない。オバマ前大統領は、連邦政府が一括して移民の子に市民権を与える大統領令を出すと公言したところ、26もの州が嫌がり提訴にまで踏み切ったため、大統領令は無効に終わった。移民受け入れの是非はさておき、これがトランプ大統領就任前のアメリカの実情である。そして、結局オバマ氏は任期中の8年間で250万人以上もの移民を国外退去させたと言われており、この数はブッシュ政権から続く16年間において最多数に上る。案外、オバマ氏のこうした側面を知らない人は多い。
結局、移民の子オバマ氏は移民政策を失敗させ、むしろ自ら250万人以上もの移民達を国外追放してしまった。つまり、耳当たりの良い公言で移民受け入れを夢を見させるも、実際には真逆のことをしていたことになる。それでもなお、移民の子オバマ氏の矛盾した痕跡を無視し、現実を直視した実行力を持つ新政府を非難する人も確かに存在する。アメリカ保守層は、ヒューマニズムを理解しながらも、合法的かつ公平に移民を受け入れる方法を探るのみである。