J-CPAC2018の最終日となる11月18日(日)は、前日に引き続き参加いただいたミック・マルバニー合衆国行政管理予算局長のほか、甘利明自由民主党選挙対策委員長、国際政治学者の藤井厳喜氏など、錚々たる顔ぶれのゲストにご登壇いただいた。立ち見の多く出る盛況ぶりであり、日米の保守派の連帯、そしてアジア・太平洋地域の平和と安定に対する関心の高さをうかがわせた。
二日目の数々のセッションを貫くテーマは、「中国とどう対峙するか」であったと言ってよい。マルバニー局長・甘利選対委員長ともにご登壇いただいた午前のセッション「21世紀の貿易戦争」では、単なる貿易不均衡ではなく、知的財産や技術移転の強制など様々な面でルールを捻じ曲げる中国に、どのように向き合うべきかが論じられた。
また、その後の2つのセッション「How To 核武装」「宇宙・サイバー戦争」でも、迫りくる中国の脅威(核の場合には北朝鮮がより直近の課題であるが)に、軍事的に対応できるのか、いかなる戦略を日本はとるべきなのか、といった深刻な問題が取り上げられた。
フィナーレを飾る「アジア太平洋における各国の連帯」では、日・米・韓・印・豪の5カ国から登壇者が集結し、地域における保守派の連帯によって、地域の自由、安定、ひいては国民が尊重されるというテーマが改めて確認された。
J-CPACは2018年もこうして盛況のうちに幕を閉じたが、保守派の活動は不断に続けられなければならない。JCUは、今後も「行動する保守」としての活動を幅広く繰り広げていく所存である。
予想以上の来場者数で、満員のセッションが続出した
会場入りするための行列
熱弁を振るうマルバニー米予算局長
確固たる持論を展開した甘利明・元経産相
J-CPAC2018で共に登壇した、甘利明元経産相とマルバニー米予算局長
2つのセッションでモデレーターを務めた藤井厳喜氏
ACU事務局長ダン・シュナイダー氏
インドの中国研究戦略センター(CCAS)所長、ジャヤデヴァ・レナード
JCU議長・あえば直道氏
オーストラリアの立場を語ったグレッグ・ストーリー博士
KCU代表、チェ・ヨンジェ氏
なんとも刺激的なタイトルである。「How To 核武装」。唯一の被爆国として国際社会に核軍縮・廃絶を呼び掛けてきた日本において、このことを議論することそのものが「倫理的にあってよいことなのか」を問わなければいけなかった。それは事実だ。
しかし、国際政治学者である藤井厳喜氏は、日本はやがて核武装しなければならなくなる状況に立たされる、と指摘し、その条件として(1)北朝鮮の核武装の完成、(2)南シナ海の中国支配の完成、を挙げた。北朝鮮が核兵器の威嚇によって本邦を脅かし、シーレーンを中国の戦略原潜が我が物顔で航海するようになったとき、我々は安閑と「非核」を貫けるのか、と藤井氏は指摘する。いつまでも核武装がタブーであり続けることで、より大きな危険を招き寄せてしまうという危機感がそこにある。
元航空自衛隊空将であった織田邦男氏は、核武装した3カ国(北朝鮮・中国・ロシア)に取り囲まれているにもかかわらず、我々はそれを「見なかったこと」にして安心しているのではないか、と指摘する。織田氏の分析によると、北朝鮮は将来にわたって核放棄しない。金正恩体制の正統性に関わるうえ、カダフィやフセイン、あるいはウクライナ(ブダペスト合意)の末路を理解しており、核放棄による「保証」など信じられるはずがないのである。そうであるなら、核兵器を抑止する手段が必要であり、いわゆる「懲罰的抑止」の一環として核保有を議論すべきなのだ。
もちろん、日本は技術的に核兵器を保有することはできても、実際に保有「できるか」については、低くないハードルが存在する。この点を、ACU事務局長のダン・シュナイダー氏は、「3つの課題」としてまとめた。すなわち、(1)政治的支持の欠如、(2)核拡散防止条約(NPT)をはじめとした法的制約、(3)国際的反応、である。国内的支持が不十分であるのみならず、NPTをはじめとした核保有への強い規制が存在するなか、日本の核保有は容易ではない。
だが、ジェイ・レナード氏がインドによる核武装の理由として示したように、侵略的な国家(インドの場合にはパキスタンと中国)に囲まれているとき、実行的抑止を考えるのは国家の責務である。シュナイダー氏、レナード氏ともに、こうしたハードルを乗り越えて日本の核武装が実現すると、自由主義陣営にとって好ましい環境が創出されると指摘した。
これらを踏まえていま、日本が取り組むべきなのは核武装についてタブーを解き、「真剣に議論する」ことだ。これはすべての登壇者の意見の一致するところで、核により圧力を加える諸国は、日本が真剣に核武装を議論し始めた段階で戦略修正を考え始めるはずだ。なぜなら、物理的な核保有はそれほど日本にとって高いハードルではないからだ。つまり、「真剣な核武装論議」こそ、日本がすぐにでも始められる「抑止」戦略の第一歩なのである。