■仮想通貨が槍玉に挙げられている
ここ最近、仮想通貨が要人や公の場で槍玉 に挙げられている。
「仮想通貨はダメだ」とか「仮想通貨はねず み講だ」と、いずれも真っ向から否定するも のだ。が、まだ少数のユーザーや関係者の間
でしか話題に上らないでいたことを思えば、これは“近い将来の金融システム”を席捲す るだろうことの前兆と受け取ることは果して楽観的だろうか。
一つは米トランプ大統領のツィートだ。「私はビットコインや他の暗号通貨などのお金ではないもののファンではなく、それらの価値は激しく変動し、根拠のないものをもとにしている。規制されていない暗号資産は麻薬取引などの違法行為を促進する可能性がある。……アメリカには唯一の本当の通貨があり、それはかつてないほど信頼ができ、世界中で最も支配的な通貨であり、『米ドル』と
呼ばれている」
要するに「暗号資産はダメ、米ドル最強」と、トランプ節を炸裂させた。ここで注目すべきはトランプ大統領が「Bitcoin」の単語を初めてツィートしたことである。その経緯はFRBのパウエル議長が
“現在は米ドルが支配している金融システムを将来的に暗号資産が一変させる可能性があることを認めた”ことに対する反論にあった。
「トランプ大統領が何を呟くか」今や彼のツィートは常に世界中から注目され、影響力も大きいのだが、今回のツィート受けてビットコイン相場は当初6.8%上昇していたが、それ以降は上げを消す展開となった。
ただ「Bitcoin」を初めて呟いたということは、言い換えれば「無視はできない」とアメリカの大統領がその存在感を認めたことであり、仮想通貨の普
及が加速度を増していることを暗示しているといっていいだろう。
特に、トランプ大統領が指摘した暗号資産の欠点はあながち間違いではなく、たとえば「違法行為に使われる可能性があり、価格変動が激しい」だが、それは暗号資産は投機目的の売買が大半だからで、このこと自体をもって欠点にまでなりえない。今後、一般的な決済に使われはじめて、かつビットコインが許可され安全な資産と認識されれば今よりも価格は安定し、また総発行枚数に制限があることと新規の発行枚数が徐々に減っていきインフレに強いゆえに長期で価格の上昇も見込まれるからだ。トランプ大統領のツィートはそれを再認識させるきっかけとなった。
価値についても、「米ドル」などの法定通貨は政府の信用があってのものであり、暗号資産もブロックチェーンの信用が価値を生み出すわけで、勝手に枚数を増やせず、第三者不要で送金が可能なのは信用のなせるわざであり、価値そのものといえるのである。
結局、トランプ大統領の指摘があらためて暗号資産の将来性を引き出した恰好となった。他、日本国内でも公の場で声を大にして仮想通貨を否定する御仁がいる。敢えて名前を出すまでのこともないが、参院選の街頭演説で得意満面に訴えるのでつい耳を傾けたが、あまりの仮想通貨に対する知識不足に閉口してしまった。
まずは「仮想通貨もねずみ講と構造は一緒だ」というのだ。そもそも、仮想通貨にはねずみ講のように入会金は無く、会員を増やさなければ損をするといった仕組みもないわけで言いがかりも甚だしい。敢えて言わせて頂くと、「ねずみ講に似た詐欺に仮想通貨が利用されることがある」というところだろうか。演説に興が高じたのか、「仮想通貨には根拠となる富がない」とも叫んでいた。根拠となる富がないのはアナタの財布の中のお札といっしょであり、それは政府の信用によって価値があると思って使うからであり、そのことを裏付ける金のような物質が存在するわけではない。仮想通貨の場合はブロックチェーンの信用によって価値が生み出されていることを知って頂きたい。
また「仮想通貨の決定的な弱点はサイバー攻撃にめちゃめちゃ弱いことだ」とも得意気に言っていたが、確かに取引所がハッキングを受けて仮想通貨が盗まれる事件が何度か起きたが、これは取引所がサイバー攻撃でハッキングされた事実であり、現在の暗号技術である公開鍵方式のセキュリティー技術の限界を示しただけのことである。最も呆れた“理論”は、中国と北朝鮮のサイバー軍団が日本の富裕層が資産を仮想通貨に移行しているのを虎視眈々と狙っているという。スパイ映画の構想なのか、そんな稚拙な陰謀物語はハリウッドからも相手にもされないだろう。仮想通貨を出している日本のメガバンクと両国が裏でつながっているような話にまで飛躍していて、もうこうなると妄想にまでは付き合いきれない。
要するに、いずれも仮想通貨の恐怖心を広げるために、犯罪や暴落などと適当に結びつけているとしか考えられない。とかく新しい技術が登場すると、重箱の隅をつっつくかのようにあらぬあら探しをするかの、余計なお節介を焼く輩がいるが……。政治を担おうとする者ならば、ただやみくもに「No」を叫び続けるのではなく、その新しい技術をどのように利用し成長させ、そして産業にするかを考えるのが責務でないか。貧困な想像力を働かせるのではなく、旺盛な創造力にこそ政治の源があるわけだから。
とはいえ、このように仮想通貨が内外で公に俎上にのぼるのは正しい理解を深めるために意義があり、と同時に今後大きく普及成長していくことも望める。ユーザーや関係者には有難いことで、特にワシントンから火の手が上がったのは喜ばしいかぎりである。