通信事業から中国企業を実質的に「締め出す」動きが、世界各国で進んでいる。
12月18日にはチェコ政府が、内閣職員の華為技術(ファーウェイ)の製品使用を禁止した。日本政府も、ファーウェイと中興通訊(ZTE)の2社を中心に、政府調達では利用しないとの申し合わせを12月10日に行った。さらに14日には、携帯電話の高速通信規格「5G」用の電波を割り当てる指針にこの2社の基地局などを採用しないよう、携帯大手各社に求めている。
こうした動きの先鞭をつけたのはアメリカの国防総省で、2018年5月に世界中の米軍基地で中国企業製品の販売を禁止した。11月には、ファーウェイ製通信機器の使用を中止するよう、アメリカ政府は同盟諸国に求めている。理由は主に3点あると考えられている。
個人向けデバイスに対する情報漏洩の問題はいまに始まったものではなく、2012年にはすでに米国下院が企業名を名指しして指摘している。しかし、現在問題視されているのは、新規格の移動通信システム(5G)や衛星ネットワークといった、従来よりはるかに大規模なインフラ全体にかかわる脅威なのである。
ファーウェイの特徴は、そのビジネスの多くを中国国外で行っていることだ。すなわち、通信ネットワーク機器の世界最大の供給者であり、スマートフォンの世界第二位のメーカーである。技術的影響力は、ヨーロッパ、アジア、アフリカのほとんどすべての国を覆う。
その一方で、同社は創業者一家による「個人所有」状態であり、オーナーシップ構造には不透明なところが多い。創業者が中国人民解放軍にかつて属していたこともあり、人民解放軍や中国共産党との強いつながりが絶えず指摘され続けている。率直に言えば、顧客や通信網から得られた情報は、中国政府の要請に従って、ファーウェイから提供されていると考えられるのだ。
ファーウェイと中国共産党との強いつながり、そしてそこから生じる情報漏洩への危機感は、単にトランプ政権による「米中貿易戦争」の一環に留まるものではない。アメリカでは超党派で危機感が共有されており、今年6月には民主党のマーク・ワーナー上院議員も懸念を表明する公開書簡を発表している。
今後、こうした中国企業の「市場締め出し」は、より強化される方向に動くだろう。12月20日に「ウォールストリート・ジャーナル」が伝えたところによると、グローバル金融機関であるHSBCとスタンダード・チャータードがファーウェイへの新規融資を停止する。両銀行はファーウェイの世界展開を後押ししたとも言われており、関係見直しは同社にとって大きな打撃となるだろう。日本は、ようやく政府調達からこうした「問題あり」の企業を外す方向に動き始めたが、今後は世界的潮流をより細かく把握し、官民一体となって取り組みを強化すべき時が来ている。